ハチロクサンを使いはじめて1年半、Z8との組み合わせで使いはじめて半年以上経過しました。現時点での感想を述べてみたいと思います。
重量
軽くなったとは言え、Z8で910g、ハチロクサンが2385gありますから、合計で3295gもあります。それをリュックのハーネスからぶら下げてフィールドを歩き回って手持ちで撮影していますので、色々と障害が発生するのではないかと危惧していました。
Z8+ハチロクサンの組み合わせは、5月末から約7ヵ月間、週に3日はフィールドに出ていましたが、今のところ心配していた大きな障害は発生していません。3日連続で出かけたりするとひどい肩こりに襲われたりしますが、心配していたぎっくり腰や腱鞘炎などの治療が必要なほどの障害は今のところ発生していません。
ダンナの策略なのか、ボディはNikon1J1からはじめて、D5600、Z50、Z8と段階的に重くなり、レンズも軽い70-300ズームから200-500ズーム、ハチロクサンと変遷してきたので、知らないうちに背筋や腕の筋肉が鍛えられていたのかもしれません。
10年前はもちろん現在のような最適なシステムはありませんでしたが、野鳥撮影をはじめるときに今の3.3kgのセットを持たされたらおそらく嫌になっていたでしょう。この10年間のちょっとずつのステップアップ期間があったからこそ現在この撮影セットを持ち歩けているのだと思います。
しかし、正直言って軽くはありません。よくこんな重いものを持ち歩いているな、と自分でも思います。しかし、フィールドで野鳥を見つけ、ファインダーで確認し、撮影した画像を見ると「やっぱりZ8+ハチロクサンにしてよかった」と心底思うのです。撮影している時は興奮状態なので、こんな重いものでも水平に構えて腕がプルプルする限界まで連写しています。
まさに「セーラー服と機関銃」の「カ・イ・カ・ン」に通じるものがあると思います(歳がばれますが)。
Z8の使用感
Z50からのステップアップなので、こと野鳥撮影に関しては圧倒的に有利となりました。AFも露出も手ブレ補正も、本当に「圧倒的」という表現がふさわしい違いです。
AF
Z8は動物認識ができるようになったので、自動的に鳥を認識して、鳥の目を検出してくれます。目に対するピント精度が格段に上がりました。カメラが進化した分、腕は落ちているのかもしれませんが、ここは最新技術にあやかって良いのでしょう。Z50の頃はピンボケ写真を量産していましたが、Z8になってからは、PC画面で等倍に拡大してもばっちり目にピントが合った写真が撮れるようになりました。
ダンナの強い勧めで初心者がこんな高機能なカメラを購入してしまい、使いこなせなかったらモッタイナイと最初は心配していました。しかし、言われた通りむしろ逆で、ボディが進化した分、今までのどのカメラよりも簡単に撮影ができるようになり、成功率が上がりました。使いはじめた瞬間から実感しました。
露出
露出もZ8の優秀なファインダーのお陰で補正が楽に行えるようになりました。ファインダーが良く見えるので、白飛びを抑えたり、黒つぶれを回避したりできるようになりました。
真っ白い羽毛部分がある野鳥は多いのですが、その白い羽が白飛びしないように調整します。まだ露出は完全にカメラ任せにはできないので、白飛び回避だけは手動で行っています。
露出補正はハチロクサンの仕様も大きく貢献しています。コントロールリングを露出補正に設定しているので、ファインダーを覗きながら直感的に補正できます。
手ブレ補正
Z50にはボディ内手ブレ補正がありませんでした。ハチロクサンにはレンズ内手ブレ補正が付いていたので、Z50との組み合わせでも手ブレ補正を使えましたが、Z8とハチロクサンの組み合わせではシンクロVRが使えます。スペック上は0.5段の差ですが、実際に使ってみるとそれ以上の違いがあるように感じます。
普段はDXフォーマットで使用しているので、画角としては1200mm相当になります。大きな違いは、メカニカルシャッターの有無ではないでしょうか。1200mmともなると、シャッターブレの影響も大きくなります。Z8はメカニカルシャッターレスなので、ミラーブレもシャッターブレもなく、同じレンズでも有利になっているようです。
ハチロクサンは開放Fが6.3で決して明るくはありませんが、Z8との組み合わせの強力な手ブレ補正機構の恩恵で、私のような非力な女性でも手持ち1/60秒くらいまでは普通に使えてしまいます。
ご存知のように野鳥たちは日没後、寝る前に結構活動するのですが、その薄暗くなってきた環境で撮影するときにここまでシャッターを落として手持ち撮影できるのは驚きです。
不満点
重さ、と言いたいところでしたが、半年使用して重さには慣れました。もちろん、もう少し軽くなってくれたらありがたいとは思いますが、もしかするとこの重量は、ハチロクサンとの組み合わせではバランスが良くなったり、手ブレが減ることに貢献している可能性もあります。むやみに軽ければ良いとは思えなくなってきました。
NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR Sの使用感
ハチロクサンは発売とともに購入したので、1年半以上使用しています。購入前はゴーゴーロクを使っていましたが、その前は200-500ズームを使っていたので、その頃に大きさと重さの感覚は大分鍛えられたのでしょう。ハチロクサンへのステップアップは、重量的にはほとんど問題ありませんでした。200-500ズームとは85gの差しかありません。このくらいなら誤差です。
しかもハチロクサンは重心がカメラ寄りになるように設計されているので、200-500ズームよりも、むしろ軽く感じました。
とは言っても2385gあるわけですから、非力な女性にとってはかなり無理をして持ち歩かないといけない代物であることは確かです。
しかし、ひとたびレンズを通してファインダーを覗くと、何としてでもハチロクサンを持ち歩かなければいけないと思ってしまいました。ファインダーを覗いただけでズームレンズとは異なる画質に圧倒されました。
焦点距離800mm(1200mm)ということ
やはり単焦点の800mmということが野鳥撮影では有利となります。Z50はDXフォーマットでしたし、Z8も主にDXフォーマットで使用しているので、35mm判換算の1200mm相当で使用しています。300mmや500mmまでのズームレンズとは鳥が写る大きさもさることながら、単焦点ならではの解像感が大きく異なります。これは目から鱗でした。
手持ちで1200mm相当の超望遠レンズが使え、野鳥に向けても強力なVRのお陰でピタッと像が安定します。そのままシャッターを押せば超高解像の野鳥写真が撮れてしまいます。
これを経験するともう他のレンズには戻れなくなります。特に個人的には小型(スズメサイズ)の野鳥を被写体としているので、脅かさないように遠くから大きく写す必要があり、Z8+ハチロクサンが私の使用目的には最適解なのではないかと思っています。
F6.3ということ
決して明るくはありませんが、手持ち撮影できるサイズと重さのレンズに作り上げるために、Nikonの技術者は現在の光学技術の粋を集めて位相フレネルレンズで開放F値を6.3の仕様にしたのでしょう。ハチゴロウ(800mm F5.6)よりも1/3段暗くする代わりにフィールドで有利となる機動性を持たせることに重きを置いたのでしょう。
6.3に抑えてサイズと重さを抑えた設計は、野鳥撮影用超望遠レンズとしてはまさにドンピシャで理想的だと思います。ハチゴロウはレンズ単体で4590gもあり、よほど体力がある人でない限り手持ちで使うのはかなり難しいでしょう。三脚か一脚が必須になってしまいます。ハチロクサンはギリギリ手持ち撮影できる限界で、絶妙な設計だと思います。
また、単焦点レンズは開放から高解像度、高コントラストなので、特別な意図がない限り野鳥撮影は開放で使用することが多いと思います。開放F6.3の被写界深度は、スズメサイズの野鳥を画面いっぱいに写したときに目を中心として前後数ミリの深度となります。少し離れた状態では、クチバシから首あたりまでの被写界深度となり、立体感が表現できて丁度良いF値だと思います。
F値が暗い分、ハチゴローなどと比べるとボケは少なくなりますが、十分離れた背景などは自然なボケが表現できます。
逆光耐性
フィールドで撮影していると、光の状態がいつも良いとは限りません。きれいに順光になることは少なく、むしろ半逆光や逆光ぎみになっていることの方が多いのではないでしょうか。
今まで使ってきたレンズは、比較的逆光に弱く、順光では素晴らしいパフォーマンスを発揮しても、逆光気味になると急にフレアやコントラストの低下に悩まされました。ハチロクサンは位相フレネルレンズを使用しているので、逆光耐性はあまり期待していませんでした。
しかし、これも使ってみて驚きました。位相フレネルレンズの位置を奥に移動しているからなのか、ナノクリスタルコートのお陰なのか分かりませんが、今まで使っていたレンズよりも遥かに逆光耐性があることが分かりました。
今までは逆光気味で諦めていたシチュエーションでも、安心して撮影ができるようになりました。これは嬉しい誤算です。
AF速度
同クラスの他のレンズと比較したことがないので、このレンズのAF速度が速いのか遅いのかはよく分かりません。しかし、野鳥を撮影する上で十分な速度で合焦しますし、今までAF速度に不満を持ったことはありません。必要十分な速度ではないでしょうか。
ボディをZ50からZ8に変えた時は、レンズは変わっていないのにAFが速くなったように感じました。おそらく、動物認識のAFの完成度が高いため、迷いなく目にピントが合うので速く感じるのでしょう。実際無駄な動きが減って、結果的に早く合焦するのだと思います。
レンズ側の機構としてのAF速度よりも、ボディ側の被写体認識やボディからのAFのコントロールによる合焦までの速度の方が、体感的なAF速度には影響が大きいのではないでしょうか。
手ブレ補正
Z8の評価の方に書きましたが、ボディ内手ブレ補正があるカメラとハチロクサンの組み合わせでは、シンクロVRとなり、レンズ単体で5段分の手ブレ補正が、5.5段とパワーアップします。すべて手持ち撮影なので、0.5段でもありがたく、成功率は確実に上がります。メカニカルシャッターレスのボディとの組み合わせでは、超望遠撮影では影響が大きいシャッターブレも全くなくなり、公称値よりも良く効いているように感じます。
手ブレ補正は最も効果が大きいノーマルモードで使用しています。
不満点
ハチロクサンは野鳥撮影においてはほぼ完璧な仕様だと思います。唯一の不満点は最短撮影距離です。都市部の公園では人馴れした野鳥が多く、かなり近距離に来てくれることがよくあります。そんな時、ハチロクサンのピントが合わず、合焦させるために後ずさりする状況がしばしば起きます。ゴーゴーロクの最短撮影距離は3.0m、200-500ズームの最短撮影距離は2.2mという近距離撮影が可能ですが、ハチロクサンの最短撮影距離は5mです。もう1m寄れれば、と思ったことは一度や二度ではありません。
総評
野鳥撮影のシステムとして、Z8とハチロクサンのセットは自分にとっては今のところ最高の組み合わせになっています。細かな不満点や要望はありますが、現状この組み合わせのパフォーマンスを見ると贅沢は言えません。
問題はいつまでシステム全体の重さに自分の体力がついていけるかです。体力的に持てなくなるまでとことん使い続けようと思っています。
持てなくなったころに、より軽い1000mmなんかが出ているかもしれませんし、高感度耐性がすごく良いボディが出て、F値が暗い軽い超望遠でも現状と遜色ない写真が撮れるようになっているかもしれません。
密かに期待しています。
作例
つたない写真ですが、この半年あまり、Z8で撮影した可愛い野鳥たちです(トリミングあり)。
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